あたたかな日差しのなかに、まだ少し肌寒さが残る3月ーー。
ふと立ち止まって、これまでのことやこれからのことを考えたくなる、そんな時期かもしれません。
今月は「旅」「思索」「癒し」という、まるで小さな読書の三部作のようなテーマに導かれながら、本をめくっていました。
ページをめくるたび、どこかへ連れていってくれるような感覚。本のある日々を、ここに記しておきたいと思います。
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旅をするように読む:非日常への扉を開けてくれる本
『世界の果てまで行って喰う』石田ゆうすけ

世界中を自転車で旅した著者が、各地で「一番おいしかったもの」だけを語るエッセイ集。
食べるために走る、食べることで記憶が鮮やかに蘇る。そんな旅があることにワクワクします。
世界には、私の知らない文化がまだまだあって、それぞれの土地に住む人たちの生活が生き生きと描かれているので読後、とても前向きになれる本でした。
さてさて、無性に旅に出たくなりました。できれば、胃袋を空っぽにして。
『死ぬまでに行きたい海』岸本佐知子

エッセイなのにどこか幻想的で、詩のようでもある。
日常の中にある「ふと遠くへ行きたくなる」気持ちに寄り添ってくれる一冊でした。
意外だったのが著者は、”超”がつくほどの出不精だということ。すぐ近所にあるクリーニング屋さんに行くのもおっくうだという。現実逃避をしたい夜にこそ読みたい一冊。
頭を耕す読書:知的スイッチをオンにしてくれた本
『東大生の本の「使い方」』重松理恵
「東大生の本の読み方が気になる」と思い読んでみることに。
東大生っていうだけで、とても難しい本を読んでいるかと思っていましたが、ある”目的”を持っていたんです。
東大生の読書は読むだけではありません。「なぜそうなるのか。」と考えながら読んでいたり、口コミ選書で良書を見つけていたり、「読後、どうなりたいか」を意識しているようでした。
”東大生”にはなれなくても、読書の方法をマネて、一皮むけた読書生活をしてみたいと思います。
『読書力』齋藤孝

読書って何のためにするの?――
そんな素朴な問いに、真正面から向き合ってくれる本です。読書について多角的に解説してあり、読書を通して「自分の考えを育てる」ことの大切さを、あらためて感じました。地味だけど、本好きにとっての原点回帰になる一冊です。
物語に浸る:余韻を味わう静かな時間
『小説』野崎まど

タイトルが「小説」って、どういうこと?と読みはじめたら、見事に思考の迷宮に迷い込んでしまいました。
本屋大賞にノミネートされている作品であり、私の周りの友人たちからも「この本は面白い!」とおすすめされていました。
メタフィクションという言葉では片づけられない、読者の知的好奇心をくすぐる挑戦的な一冊です。
『月とコーヒー』吉田篤弘

読書の時間そのものを美しくしてくれるような物語。
特別なことは起こらないけれど、夜の喫茶店にいるような静けさと温もりがありました。目まぐるしい日常の中で、こういう本がそっと寄り添ってくれると嬉しくなります。
心をほどく本たち:癒しと気づきの読書時間
『満月珈琲店の星占い~心が整う12星座のスイーツ~』望月麻衣

自分の星座のページを読むだけで、なんだか心がふわっと軽くなる。
スイーツ×占い×優しい物語、という組み合わせが絶妙で、疲れた日にこそ手に取りたい。イラストも美しく、贈り物にもおすすめです。
『詩と散策』ハン・ジョンウォン

この本を読むと、「何も特別じゃない日常」に、小さな美しさが宿るような気がします。
詩と散歩。なんてことのない日々の中に、静かな発見がある。それに気づかせてくれる、やわらかな読書体験でした。
今月読んだ本の中で特に印象的だった一冊
読後いろいろ考えてしまったのは、野崎まどさんの『小説』です。
「読むだけでいいのか」「いや、読むだけでいいんだ」
こう感じている人も多いのではないでしょうか。実際のところ私も”読むだけ”です。
何か行動しなくては!と思い、読書ノートを書いてみたり、日記帳に一言感想を記録しています。この”後ろめたい共感”をこの本から感じたことで、自分自身の読書生活を考えるきっかけにもなりました。
おわりに:本を読むことは、日々を旅すること
旅に出るように本を開き、思索を深めながら読み進め、そしてそっと癒される。
3月の読書は、そんな一連の流れのような時間でした。
ページの向こうには、自分の知らない世界が広がっていて、でもどこかで自分自身と向き合っていた気もします。
4月はどんな本に出会えるか楽しみですっ
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